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漫画・嗤う伊右衛門 (単行本コミックス―怪BOOKS)

漫画・嗤う伊右衛門 (単行本コミックス―怪BOOKS)

京極夏彦の傑作『嗤う伊右衛門』の漫画版。
ざっと見た限りでは、メディアミックス作品としては平均以上の良い出来だとは思います。
あくまで、「メディアミックス作品」としてはですけれど。


こういったメディアミックス作品全般に言えることですが、小説、映像作品、ゲーム等の原作のストーリを再現するタイプの場合、大体が原作の内容を網羅できず、中途半端なダイジェストのような出来になってしまいます。
元々、企画段階で、コミック一冊分等と分量が決められてスタートしている場合が多いと思いますので、必ずしも漫画家の力量不足だけが原因ではないと思います。(メディアミックス作品を手がける漫画家の多くが、あまり実力の無い人が多いのも事実ではあるとも思いますが)
出版社にも事情があるとは思いますが、原作が売れているといった理由だけで、安易にメディアミックス化するのは辞めたほうがいいと思います。原作のファンの失望を買い、結果として原作を貶めるようなことになりかねません。


この漫画版『嗤う伊右衛門』も同様です。
内容は比較的良く出来ていると思いますが、頁数が少ないため、かなり駆け足で話が進んでしまいます。
この作品は、怪談の側面も持った作品なので、恐怖を演出するためには「間」の使い方が非常に重要になってくるのですが、頁数の兼ね合いで「間」が殆どありません。
その為か、原作のような背中に迫るような恐怖感が殆ど感じられません。
あれだけの長さの原作を、一冊に纏めているのですから、仕方が無いことだとは思いますが、あの原作の魅力をこのような形で漫画化してしまったのは、漫画家の絵が京極作品になかなかマッチしているだけに非常に勿体無いと思います。