書痴の書架より

百鬼繚乱―江戸怪談・妖怪絵本集成

百鬼繚乱―江戸怪談・妖怪絵本集成

蔵書の妖怪本よりひとつ。
江戸時代中期以降の妖怪書籍を纏めたもので、収録作品は、


百鬼夜講化物語
模文画今怪談
絵本小夜時雨
怪談四更鐘
怪談おそろ史記
姫国山海録


以上の六点です。
原書はいずれも入手が非常に困難で、且つ販売していても高価で手が出ません。
こういった形で再録していただけるのは非常にありがたいです。


さて、各タイトルを簡単に解説します。

百鬼夜講化物語〜ひゃっきやこうばけものがたり〜

所謂普通の妖怪図鑑です。
妖怪の名称とイラスト、説明文が載っています。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』シリーズに似たような作りになっています。
「うぶめ」「みこし入道」等のメジャーな妖怪も乗っていることもあり、収録されている書籍の中では、一番なじみのあるスタイルだと思います。

模文画今怪談〜ももんがこんかいだん〜

怪談を収録した絵本と言えば一番イメージがしやすいのではないかと思います。
妖怪を題材に採った話が多数収録されていますが、妖怪の話かどうか微妙なものもあったりします。
エピソード数が結構有るので、読み応えがあります。

絵本小夜時雨〜えほんさよしぐれ〜

これも、『模文画今怪談』と同様に絵本のような作りをしています。
妖怪図鑑というよりも、怪談・奇談を集めた作品集と言った方が良いでしょう。
これも、シリーズが沢山刊行されていた為、収録話数がかなり多いです。

怪談四更鐘〜かいだんうしみつのかね〜

本来は、子供向けの読み物として出されていたのでしょう。所謂「黄表紙」本ですね。
イラストがコミカルなイメージを受けました。
収録話数は少なめです。

怪談おそろ史記〜かいだんおそろしき〜

私達が想像する「妖怪」は出てこない書籍です。幽霊のようなものは出ていますが。
矢張り、怪談・奇談の作品集となっています。
個人的には、書籍の表題にセンスを感じます。

姫国山海録〜きこくせんがいろく〜

中国の架空の地理書『山海経』をイメージして書いたのでしょう。非常に作りが似ています。
山海経』に登場しそうな妖怪(?)を収録した図鑑のスタイルを採っています。
但し、私が知っている妖怪は一体も出ていません。
しかも、本文が漢文で書かれているので、解説文が無いと全くわかりません。
一見、唐渡りの書籍かと思ったのですが、本文(の書き下し文)を読むと、日本の妖怪を扱っていることがわかります。



いずれもあまりメジャーな妖怪は載っていないので、新鮮なイメージがあります。
只、石燕の洗練された画集を見た後では、少し野暮ったい感じを受けてしまいました。
崩し字が読めれば、より楽しめると思いますので、是非ともアダムカバットの『妖怪草紙―くずし字入門』*1で崩し字をマスターして、再読、三読に挑戦したいものです。

*1:『妖怪草紙―くずし字入門』については、一月十六日を御参照してください。