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化けものつづら―荒井良の妖怪張り子

化けものつづら―荒井良の妖怪張り子

京極夏彦の文庫の表紙でお馴染みの、荒井良の妖怪張り子の作品集、『化けものつづら』を購入しました。
購入とは行っても、二十二日に行ってきた作品展で購入した物が届いただけなのですが。
簡単に内容を紹介してみます。



収録作品

姑獲鳥
文庫版『姑獲鳥の夏』の表紙に使われている張子です。
片方の足で立って、柄杓を咥えています。「姑獲鳥」なのにオプションの赤ん坊の姿がありません。

古籠火
記憶が曖昧ですが、確か『妖怪馬鹿』の表紙に使われていたものだと思います。

魍魎
文庫版『魍魎の匣』の表紙に使われている張子です。
魍魎に齧られている屍体が結構リアルです。

狂骨
文庫版『狂骨の夢』の表紙に使われている張子です。
イメージは音で、眼窩を風が通り抜けているそうです。

絡新婦
文庫版『絡新婦の理』の表紙に使われている張子です。
刺青が飛び出て蜘蛛になっています。

塗仏
文庫版『塗仏の宴 宴の始末』の表紙に使われている張子です。
『塗り仏の宴 宴の支度』の表紙に使われている「うわん」「ひょうすべ」「しょうけら」「わいら」も一緒に載っています。
この「塗仏」は、仏壇の中に鎮座ましまし、「うわん」「ひょうすべ」「しょうけら」「わいら」を従えているのです。

出世螺
『絵本百物語』に収録されている妖怪、「出世螺」の張子です。
京極作品では、「出世螺」のエピソードはまだありませんので、京極夏彦とは関係の無い張子なのでしょう。

化け達磨
目が三つあり、手足の生えている達磨さま。仏門の方なのに、御酒を嗜まれています。
江戸時代後期の滑稽な達磨をイメージして作った張子のようです。
只、『豆腐小僧双六道中』の「滑稽達磨」のイメージとは合わないので、これも又、京極作品とは関連の無いような気がします。

鉄鼠
文庫版『鉄鼠の檻』の表紙に使われている張子です。
「鉄鼠」頼豪阿闍梨の他にも、沢山の鼠が経典を齧っています。鳥山石燕のイラストそっくりです。小さい鼠が結構ラブリーです。

帷子辻
文庫版『巷説百物語』の表紙に使われている張子です。
あまり腐敗は進んでいないので、新死相を模ったものなのでしょう。
しかし、皇后様なのに着衣がかなりみすぼらしいのは訳があるのでしょうか。

五徳猫
実際には使われていませんが、京極夏彦の『五徳猫』に合わせて作った張子なのでしょう。
目つきが非常に悪いですが、三毛猫なのできっと雌です。

宗玄火
これも、文庫の表紙に使用されていない張子です。

清経蟹
これまた文庫未収録の張子です。
所謂「平家蟹」ですね。

於岩さま
文庫版『嗤う伊右衛門』の表紙に使用されている張子です。
於岩さまの足元で、猫が於岩さまを見上げています。この猫、目つきが悪いのであまり可愛く見えません。

化粧狐
頭ではなく、背中に葉っぱを乗せている狐。これから化けるところなのでしょう。
あの安部清明の母親、信太の「葛の葉」がモデルだそうです。

鍾馗
悪鬼を踏みつけている姿が凛々しい道教の神、鍾馗さまです。化けものにカテゴライズするのは少々違うような気がします。
今回の張子の中で、一番格好良いです。

川赤子
文庫版『百鬼夜行―陰』の表紙に使用されている張子です。
赤子はおろか、とても人間には見えない不気味な笑顔が気持ち悪いです。

風神・雷神
ご存知風神様と雷神様。
京極作品とは関係の無い作品なのでしょう。
元禄時代の絵画などを髣髴させます。

死神
文庫版『続巷説百物語』に使用されている張子。
何か、能で使われているお面みたいな感じです。

天狗
京極作品とは関係の無い、オリジナルなものでしょう。
天狗の慢心を表しているとありますが、慢心の象徴である高い鼻はありませんでした。
しかし、天狗の表情そのものは、慢心しているのが分かる、非常に良い出来だと思います。

瓶長
文庫版『百器徒然袋―雨』の表紙に使用されていた張子です。
文庫の表紙で観ると禍々しいイメージを受けましたが、全体像を見ると結構滑稽な感じがします。
瓶の癖に立てひざをついて、なんだか生意気な感じがします。



現物を見るのに比べると、矢張り見劣りするきらいがありますが、文庫の表紙で見るよりかはずっと作品そのものを堪能できます。
まあ、文庫の表紙の写真は小説を引き立てるためのツマみたいなものですから仕方が無いですけど。
荒井良の妖怪張子の全体像を見たい方は、この作品集を是非見たほうが良いかと思います。