書痴の書架より(特別編1)

昨日は『ふしぎの国のアリス』萌え絵本ヴァージョンについて書きましたので、同じイラストレーター繋がりということで『もえたん』の思い出でも書いて見ようかと思います。
ただ、私が購入したのではないので、現在手元に本がありません。ですから記憶に頼った記述になりますので、細部に間違いがあるかも知れませんが、その点はご容赦下さい。


昨年の初頭の事ですが、知り合いのオタクな男性が私にとある本を薦めてきました。
私が何時も本を読んでいるので、彼のお勧めの本を紹介してくれたのでした。
私も折角勧めてくれるのだから、一つ読んでみようと思い、彼の進めるそっち方面の小説を何十冊か読みました。

そして、暫くしたある日、彼が「面白い本が手に入ったから」と言って一冊の本を持ってきました。
それが『もえたん』だったのです。

萌える英単語もえたん

萌える英単語もえたん

……
この私は……
いわゆるビブリオマニアのレッテルをはられている……
シャーロック・ホームズ』や江戸川乱歩をはじめとするミステリを読む……
『半七捕物帳』や宮部みゆきの時代劇も大好きだ
普通の人が絶対に読まないであろう小松和彦教授の学術書を読むなんてのはしょっちゅうよ
だがこんな私にも
はき気のする「空気の読めない奴」は分かる!!
「空気の読めない奴」とはてめー自信のためだけに
他者の都合をふみつけるやつのことだ!!


いや、確かに私は本が好きですので、お勧めのものがあればとりあえず読んでみます。
しかし、流石に『もえたん』は読もうとは思いませんでした。ライトノベルなどならば、小説の延長線上として楽しめますが、「萌え」と頭についてはいるものの、曲がりなりにも英語の単語帳です。エンターテイメントとして楽しめる要素など無いのではと思いました。

とは謂え、強烈にプッシュされたことと、食わず嫌いは良くないかと思い直して、最終的に借り受けて読んでみることにしました。


で、読んでみたら萌えました
素晴らしい編集、製本でした。この書籍の製作に携わった方たちは、きっと良いものを作り上げようと、伝統工芸の職人の如く、直向な努力をしたのでしょう。そんな熱意の伝わってくる作りの本でした。
先ず、リバーシブルのカバー。大半の書籍は、読者がカバーを取り外さないであろう事を前提に作っているのか、カバーの裏側には何も印刷されていません。しかし、この『もえたん』表の恥ずかしいイラストに対して、カバー裏はシックなタイトルロゴのみ。電車の中で読んでも恥ずかしく無いようにとの心配りでしょうか?細かい所にも目が行き届いています。


次に本文レイアウト。一頁毎にきちんと文章が収まっており、文章の途中で改行されて次の頁にまたがっているなどということはありませんでした。ポップな感じの書体に、パステルカラーの文字は、この本のコンセプトにぴったりとマッチしています。こういった、ページレイアウトやフォントは、一見内容には直接関わりが無いように見えます。どんな文字で書かれていようが、最終的にはテキストの善し悪しのみが評価の対象になりがちです。しかし、実際はそうだとは限りません。テキストの内容を良いものにするのは、書籍を出版するに当たっての最低限のことでしかないと思います。特に、昨今出版不況と言われている現状において、ただ単にテキストの良さを追求するだけではいけません。その程度のことは、どの作家、出版社も考えていることです。良いテキストプラスαが必要となるのでは無いでしょうか?同じレベルのテキストであれば、フォントやレイアウトの良い物の法が評価が高くなる筈です。一見しただけでは分からない部分なだけに力を入れていない出版社が多いですが、レイアウトの良い物を読んだ後に、悪い物を読むと何処が違うかが良く分かります。小説でこの部分に力を入れている作家としては、京極夏彦が有名です。(個人的には、化野燐の『蠱猫』シリーズもレイアウトが良く出来ていると思います)京極の小説は、長い割には読みやすいとの声を聞くことが良くありますが、このフォントやレイアウトに拘っていることがその一つの要因では無いかと思います。


後は紙質です。私は紙の種類に関しては良く分からないのですが、手触りが良く、捲りやすかった様に記憶しています。一頁辺りが少し厚かったよう泣きがしますが、全頁カラーなので仕方が無いのでしょう。


私は、これらの理由から、読む前と打って変わって、『もえたん』にかなり高い評価をしています。
ただ、何処かで見たような魔法少女の模造再生したキャラクタが、進研ゼミが無理矢理送りつけてくる漫画のようなストーリの寸劇はいらなかったと思います。何処かで見たような話の展開だったので、先が読めたので、見ていて非常に痛かったです。
後、本編(?)の英単語の例文ですが、昨今のアニメのパロディだと思われるものが多用されており、私には良く分からないものばかりでした。「ヒロインを安易に殺すのがストーリーに感動をもたらすと考えるのは間違いだ」といった感じのフレーズは、何かの作品に使われていたのでしょうか?また、矢鱈と妹という単語が出ていたような気がします。所謂「妹萌え」と謂うものなのだと思うのですが、その方面の知識に乏しい私は、何処が笑うところなのか今ひとつ理解できませんでした。
この二点さえなければと、今でも思っています。……って、『もえたん』のコンセプトを根底から覆す発言ですね。この本の十割の読者が異議を唱える感想でしょう。
この本の「萌え」に関する善し悪しが知りたい方は、他のレビューを参考にしてください。



出来ることなら、「萌え」を扱った単語帳ではなく、ミステリを扱った単語帳が見たいものです。題して『なぞたん』。
ミステリの名言を例文に取った単語帳で、
「金粉を全身に塗って偽装した」
「鳩が編隊を組んで飛行することによって、UFOに偽装した」
といったのが目白押し。非常に面白そうです。
一体どんな文章になるのでしょうか?




何か想像したら面白そうなので、エキサイティングな翻訳を試みることにしました。


金粉を全身に塗って偽装した
The gold dust was painted on the whole body and it camouflaged it.


鳩が編隊を組んで飛行することによって、UFOに偽装した
It camouflaged it to UFO by the pigeon's uniting the formation and flying.


何か非常に怪しげです。
他にも色々試してみることにします。


屋根裏の散歩者
Those who stroll in attic


悪魔が来たりて笛を吹く
The satan comes and the whistle is blown.


この世には不思議なことなど何も無いのだよ。
A mysterious thing etc. also have nothing in this world.


あなたが蜘蛛だったのですね。
You were a spider.


殺して解して並べて揃えて、晒してやるよ
It kills, it understands, it arranges, it arranges, and it exposes it.


ゴキブリ並みの生命力? 丸めた新聞紙で叩いたら死ぬって事か?
Vitality at cockroach level?Is it does die, painted, and a thing if it beats with the rounded newspaper?


顔面セーフありただしボクシングみたいな
However, there is a safe face and I do not want ..boxing.. to see.


どうも、全てのタイトル、台詞が英訳すると駄作に思えてきます。
しっかりとした人に、是非とも英訳してもらいたいですね。