書痴の書架より(特別編2)

何度も書いてきましたが、私はシャーロック・ホームズが好きです。
小学生の頃、『赤髪連盟』、『まだらのひも』、『青いガーネット』等のエピソードをポプラ社講談社青い鳥文庫などで読んできて、最近になって新潮文庫でキャノンを揃えなおしています。
その為、私の知り合いもそのことを把握した上で本を紹介してくれます。
そこで今回は、ドイル以外が書いたホームズで面白かったものを取り上げようかと思います。

漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫)

漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫)

島田荘司 の『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』です。
作家夏目漱石*1が留学中の倫敦において、名探偵シャーロック・ホームズと邂逅を果たすというお話です。
本編は、ワトソンの視点から書かれたいつものホームズと、漱石の視点から描かれた本当の(?)ホームズが交互に掲載される形を取っています。
ワトソン視点のものはいつもの雰囲気と変わらない名探偵ホームズが描かれているのですが、漱石の視点に変わると一変して、麻薬中毒の変人へと変わってしまいます。
まあ、百九十センチ(ぐらいでしたよね?)の高身長の人間が女装したり、事件現場で突然屈みこんだりすれば、周囲からは変人以外の何者にも見えないでしょう。


しかし、よく読んでみると奇行以外の何者でもない、キャノンのホームズの言動をワトソン視点と矛盾の無いように書くのは非常に難しいのではないかと思います。
単純に、ホームズのおかしな行動に突っ込みを入れる方が何倍も楽なのですが、その奇行も小説のストーリラインに上手く取り込んでいる辺り流石だなと思います。


この本は知り合いから借りたものの中では一、二位を争うヒット作でした。
で、非常に楽しい作品でしたので、是非とも買いなおして再読しようと思ったのですが、古い本だからなのか、何処にも売っていません。


新刊書店で売っているのを見かけた方、いましたら教えていただけると非常に助かります。

*1:当時はペンネームを名乗る前ですので、正確には夏目金之助です。