本日購入の書籍

京極夏彦画文集 百怪図譜

京極夏彦画文集 百怪図譜

京極夏彦画文集『百怪図譜』を購入しました。
妖怪の画集を購入するのは久し振りになります。


以前、銀座のリトグラフ展で展示された作品が収録されています。
展覧会に参加できなかった人にとっては僥倖でしょう。


基本的には、鳥山石燕など先人の描いた妖怪を京極がリライトした形となっていますが、京極夏彦のアレンジが加わっています。
石燕のあっさりしたタッチとは違い、「妖怪」であることを強調している為か、石燕のイラストよりも濃く、そして醜くアレンジされています。
私の個人的な好みでいえば、京極よりも石燕の方が好きなので、もう一寸あっさりした方が良かったです。


そして、妖怪画に添えられている文章が中々秀逸でした。
特に、泥田坊

色欲が泥沼のように人を呑み込むことがある。

という一文が良かったですね。

泥田坊という妖怪は、北国の農家が耕作していた土地を継いだ男が、酒代の為に手放したところ、彼の先代が妖怪泥田坊となって「田を返せ」と言いながら顕われたといいます。
しかし、本当はこういった伝承はなく、鳥山石燕遊郭通いをしていた泥田坊夢庵という人物を風刺するために創作した妖怪との節があります。
「田を返せ」と言う台詞は、表記をそのまま直に読むならば田地を返す、つまり耕作すると捉えるべきですが、スラングで性交といった意味もあるそうです。

それを考えると、先の「色欲」が何を意味するのかおのずと分かると思います。


他にも、妖怪馬鹿の京極夏彦だからこそ書ける解説文があり、非常に密度の高い仕上がりになっています。
殆どが京極作品に関わりのある妖怪ですので、京極の小説を読んだ方なら満足できるのではないかと思います。