『ゲゲゲの鬼太郎』5−17  

テレビアニメ第五期『ゲゲゲの鬼太郎』第十七話「さすらいの青坊主」の感想です。
久し振りに登場したぬらりひょんが新しい手下を連れての登場となります。今回の敵は、熱エネルギーを吸収して強化していく妖怪「火取り魔」です。
あまり有名でないマイナな妖怪ですが、作中で見せた強さは、もしかすると5期では最強かもしれません。
そして今回の敵対妖怪の選択は非常に上手いと思います。
原典の「火取り魔」が提灯の「火」を「取る」という設定を街中に大量にある「熱エネルギー」を取るという風に、上手くアレンジ(誇張、若しくは拡大解釈と換言しても良いでしょう)しており、伝承と作中のキャラクタにギャップがありませんでした。現代のエネルギーを吸収して膨張していく様は、原作における「煙羅煙羅」に通じるものがありますので、煙羅煙羅をダブらせて見ていたから余計にそう見えたのかもしれません。
ラストで、青坊主が火取り魔を石川県に封印しに行くのもポイントが高いです。ストーリに破綻が無い様にさりげなく出身地を出してるのが良いですね。思えば、5期において妖怪の出身地を作中で明かされてるのはこの火取り魔だけではないでしょうか?
原作でも登場した記憶が無い上に、伝承の方も本来は殆どの人が知らないような妖怪なのに、作中においてここまで丁寧な扱いを受けて、きっと火取り魔も妖怪冥利に尽きることでしょう。


メインとなった敵の火取り魔だけでなく、他の脇役の面々も良い仕事をしていたと思います。
最後の集団戦闘においては、登場キャラ全てにそれなりの見せ場があり、いつもは戦闘においては傍観者のねずみ男が積極的に参戦しているのも好感が持てました。
特に、いつも後ろの方で地味に動いている「呼子」と「かわうそ」は今回は大活躍をしたといってあげても良いでしょう。すなかけ婆、こなき爺と同等の働きをしていたように見えましたから。
個人的は、戦闘シーンでかわうそが口から放水するシーンがとても可愛らしくお気に入りです。
そして味方の脇役キャラだけではなく、敵も個性に応じた活躍ぶりでした。
ぬらりひょんの、戦闘中に不意を打って、背後から青坊主を仕込み杖で刺し貫くシーンは、彼の卑怯、卑劣、非情さが上手く表現できています。


そして、今回のMVPはなんといっても青坊主兄さんでしょう。
味方側のゲストキャラということもあって、終始出ずっぱりだった為、見せ場も数多く用意されていました。
近接格闘戦においては、もしかすると鬼太郎を上回る実力者らしく、火取り魔を相手に熱戦を見せてくれました。その上、妖怪らしく幻術を行使し、退魔師よろしく封印の術を使えたりと中々の芸達者です。鬼太郎の彼に対する態度からすると、人柄も良いようです。更に、極度の方向音痴という美味しいキャラクタ付けもなされていて、一話限りのゲストとして登場するには勿体無いくらいです。出来れば忘れた頃に再登場して、格好の良いアニキ振りをまた見せてもらいたいです。
惜しむらくはキャラデザインが着物を着た普通の青年風のところでしょうか?「青坊主」という妖怪は、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に描かれており、そこでは袈裟を着た一つ目の坊主となっております。
出来ることなら『鬼太郎』にも石燕がデザインしたキャラクタで登場して欲しかったのですが、何を考えたのか水木しげる大先生は原作において、「見越入道」に石燕の「青坊主」を使ってしまいました。そのため、『鬼太郎』の世界においては、青坊主の格好をした妖怪は見越入道として認識されてしまうのです。
いつもなら、デザインが違うと文句を書いているところですが、作中に同じ姿の別妖怪が出てしまっては混乱してしまうので、今回の「青坊主」が青坊主らしからぬ姿で登場したのは仕方のない措置だったと思います。


ストーリ面も中々良かったと思います。
5期はいつも尺が短く感じる位に色々な要素を無理矢理詰め込んで、後半がグダグダになってしまいがちですが、今回はそれを感じませんでした。
導入部の新キャラ紹介、強敵の登場、敗北、再戦して逆転勝利といった、バトルもののもっとも燃える黄金パターンを上手くまとめてあったと思います。
久し振りに、胸をすくような内容になっていました。


さて、今日は次回予告にはシルエットが登場しただけで、次の妖怪の名前が出ていませんでした。
しかし、あの特徴的な目はどう見ても「バックベアード」に違いありません。
今回は日本妖怪のライバルキャラぬらりひょんとの対戦で、次回は西洋妖怪のライバルキャラのベアードという形になるのでしょう。
二週続けての豪華なラインナップ。弥が上にも盛り上がります。