本日観た映画


真景累ヶ淵』を原作にした映画『怪談』を観ました。
伝統的な日本の怪談映画の手法に則った物になっておりストーリ、演出共に中々のものでした。


基本的には、主人公新吉が豊志賀の呪いに掛かり、関わる人々を巻き込んでの不幸な人生を送るといったお話です。
しかし、この新吉は、そんなに強く呪われるべきほどの事をしてきたとは私には思えませんでした。
確かに、面倒を見てもらった豊志賀に不義理を働くようなことをしてますが、決して自分の欲得のみの為だけではありません。病にかかった豊志賀の治療費を捻出する為、形見の刀を売ろうとしていたりしますので、少なくとも悪人では無いでしょう。

他にも、甲斐性の無い部分や、移り気なところが至る所で見受けられますが、新吉が能動的に働いて次のステージに話が移った場面は一切無く、ヒロインの面々が新吉に思いを寄せて近づいてきたのであって、彼はいつも受身でした。

それらのことを踏まえて考えると、新吉が悪かった点を挙げるとすれば、何もしなかった事位でしょう。


そのため、この作品を観て一番印象に残ったのは、「女の嫉妬(或いはヒステリ)は非情に怖いんだな」ということです。
この作品は「怪談」の形式で描かれているので、幽霊や呪いが出てきてはいますが、本当に怖いのは不可思議な存在や超常現象ではなく、人間の心そのものだと感じます。
幽霊そのものは怖くないけど、幽霊になるほどの妄念は非情に怖いといったら良いでしょうか。