『ゲゲゲの鬼太郎』5−54   

ゲゲゲの鬼太郎』第五十四話「吸血鬼エリート」の感想です。

今回は、原作の「霧の中のジョニー」と「吸血鬼エリート」を再構築した内容になっています。
原作のパーツを色々と抜き取って使っているので、話の大筋は変わらないのですが、大分アレンジが効いているので、見て受けた印象が原作と随分違います。

エリート、若しくはその原型となったジョニーは一期、四期、墓場においても登場しています。
これは『鬼太郎』のアニメシリーズにおいて、最大の登場数を誇ることになります。
この四つの「エリート」をそれぞれ見比べてみると、かなり違いがあって面白いかもしれません。


今回一番気になったのは、エリートの名前です。
前述したように、貸し本版の「霧の中のジョニー」とマガジン版の「吸血鬼エリート」の双方を原作として使っています。その為、名前が「吸血鬼エリート ジョニー」となっています。
どうやら、「エリート」は個人名ではなく肩書きで、本名はジョニーだけのようです。原作においては「エリート」が本名でした。
確かに、読んだ当時「エリート」と言う名前は一寸変だと思っていましたので、「ジョニー」の方を本名として採用したのには異論はありません。
しかし、「エリート」と「ジョニー」を並べて書いてあると非常に違和感を感じます。妖怪登場シーンの一枚絵は「吸血鬼ジョニー」とした方が良かったのではないかと思います。


ジョニーの外にも新妖怪が登場していました。恐山に居る妖怪医者オソレです。
この妖怪、全く記憶に無いので調べてみたのですが、蔵書の中にも、Webでもそれらしいものは見当たりませんでした。
多分ですが、恐らくオリジナルキャラクタではないかと思います。
名称は兎も角、デザインは本当に伝承のある妖怪の様に、特に『山海経』辺りに有りそうな感じがします。
どこかの画集から名称の無い妖怪を持ってきて、「オソレ」と名付けたのかも知れません。
このオソレ、恐山の医者というポジションを考えると、今後再登場する事は間違いないでしょう。


個人的には、今回は細かい子ネタが気に入りました。
先ず、吸血鬼エリートが鬼太郎を抹殺する時に使用した溶解液が「コロリポン」という名称になっていた事。
原作においては、ジョニーが溶解液を注射したらいかな鬼太郎とは「コロリポンですよ」と言っています。コロリと即死するといった意味合いの台詞であって、決して薬の名称の事を言っているのではありませんでした。
しかし、今回は何故か「コロリポン」という品名になっています。御丁寧に「KP」と薬瓶に略称まで書いてあります。
「夜道怪」の回の「天才学習塾」の事を合わせて考えるなら、きっとスタッフの遊び心によるものなのでしょう。


次いで溶けた鬼太郎の治療シーン。
泡だて器で溶けた鬼太郎をかき混ぜるオソレを見て思わず吹いてしまいました。オソレは恐山の空気を混ぜると言っていましたが、本当かどうか怪しいものです。
その後かわうそが塩胡椒をしたとか言っていますし、どう見ても料理をしているようにしか見えません。
あの後、黄色と黒のストライプのケーキが出てきても違和感を感じなかったと思います。
何か、とても水木作品に登場しそうな治療法だったと思います。


そして、ラストの鬼太郎とねずみ男の掛け合いが原作っぽくて最高でした。
ねずみ男の悪事を無条件で許してしまう鬼太郎。鬼太郎とねずみ男の距離感を上手く現している様に感じました。
このシーンを見ると、鬼太郎にとってねずみ男は外の妖怪と違い、特別な存在であるように見えます。
五期の初めの頃と違い、ここのところはねずみ男の活躍が目立ちましたが、ここに来て漸く原作のねずみ男が復活したかなとそんな気がします。
矢張り、『鬼太郎』は鬼太郎とねずみ男の独特の関係をどれだけ書けるかで面白さが全然変わってくるように思います。

それにしても、鬼太郎は白米無しで「ごはんですよ」だけの食事を日常的にしているのでしょうか?
「お化けは死なない、病気も何にも無い」とは言いますが、そんな食生活をしていて良いのか心配になります。
しかし、そんな食うに困る貧乏くさい鬼太郎は、とても鬼太郎らしくて好きです。


番外として、桃屋のCMが最高でした。一瞬、本編と見間違えるほどの再現度の高さは相変わらずです。
先週も有ったのですが、今回は本編ラストの鬼太郎の台詞と相まって効果抜群です。
キャラクタものの商品をリリースしていないにも関わらず、アニメのキャラクタを使っての宣伝はとても珍しいだけにインパクトが大きいですね。
下手に「鬼太郎ソーセージ」や「鬼太郎チップス」といった商品を出すより、レギュラー商品を鬼太郎に宣伝させる方が購買意欲を掻き立てられるのが不思議です。
CM見て必要の無いものが欲しくなる事など全く無いのですが、この桃屋の「ごはんですよ」の鬼太郎CMだけは唯一の例外になってしまいました。