『ゲゲゲの鬼太郎』5−62   

ゲゲゲの鬼太郎』第六十二話「日本妖怪全滅!?妖怪反物!!」の感想です。
今回は中国妖怪チーの登場となりました。二期や三期の劇場版で鬼太郎を一度は倒している強敵です。五期においてもかなりの活躍をする事が期待できます。
また、今期のチーは以前のように一度きりの登場では終わらないようです。日本のぬらりひょん、西洋のバックベアードに次ぐ第三の勢力として今後鬼太郎の前に立ちはだかるのでしょう。各国の敵たちが共闘、或いはお互いを出し抜きあう巴戦がこれから繰り広げられることになるのでしょう。


さて、ここで少しネタばれですがチーについて触れたいと思います。
原作及び過去のアニメにおいては、チーは金毛白面九尾の狐の弟でした。
九尾の狐といえば、天竺で華陽夫人という絶世の美女に化けて耶竭国を滅ぼしたり、中国では妲己として殷王朝を滅ぼした事で有名です。妲己は『封神演義』のヒットがあったので、結構ご存知の方も多いことでしょう。その後、平安時代末期に鳥羽上皇の元に玉藻前として現れますが、その正体を陰陽師・安倍泰成(一説によると安倍晴明だとも)に正体を悟られ、悪事を働く前に那須高原にて退治されます。退治された九尾の狐は殺生石になり毒を吐き続けて被害を出しましたが、室町時代に玄翁和尚が石を砕くことにより収まって現在に至るとされています。
チーは旧作では、その姉の復讐をするために日本に訪れたとされていました。
今期においては、まだ正体を現していませんので、本当に九尾の狐であるかは確定していませんが、まず間違いなく原作に沿った話になるでしょう。
今期のチーは、原作に無かった新能力、反物にした妖怪の力を自在に使えるようになっています。これはある意味能力のバリエーションが無限ともいえます。以前は変身前のチーの印象はあまり無かったのですが、今期は変身前からして強敵です。今後変身するのでしょうが、変身後はこれより強くなるのですから、どれだけの強さになるのか今から気になります。矢張り、鬼太郎に新しい地獄の能力が開花して倒すことになるのでしょうか?
今回は顔見世程度で能力も手勢もあまり明かしてはいませんでしたが、中国には多くの妖怪や呪術がありますから、それらを効果的に活用すれば、きっと面白い話になることでしょう。


そしてお供に登場した虎男ですが、原作や旧作では登場していなかったキャラクタだと思います。もしかするとチー軍団のその他大勢の中にいたかもしれませんが、少なくとも名前のあるキャラクタとしての登場は無かったはずです。
二人掛りとはいえ本気モードの子泣き爺を倒すほどの猛者で、てっきり前座の雑魚かと思っていただけに驚かされました。『西遊記』の孫悟空が持っている如意棒で武装していたりと、脇役の割には意外と優遇されているキャラクタですね。それにしても、如意棒って二本もあるものなんでしょうか?
この虎男は、二体同時に出ているのは、水木先生の『中国妖怪事典』の同名妖怪からでしょう。『中国妖怪事典』の虎男は、二対が向かい合って組み手をしている姿で描かれています。アニメと違う点は、裸形だという事位でしょうか。
この虎男は、欧州の狼男同様に、人間が変身する妖怪とされています。人虎或いは虎憑きとも呼ばれ、ライカンスロープやルー・ガルーと同様に、憑き物や病気の一種だとされる事もあるようです。中島敦の『山月記』もこの仲間に入れてもよいと思います。
中国からインドにかけて広いアジア地域に伝承が伝わっています。欧州の人狼伝説との関連も有るようです。
西洋三大スターの狼男に比べると、大分知名度が下がりますが、伝承の古さも伝わっている地域の広さも中々のもので、決してマイナー妖怪ではありません。ただ、フィクションに登場する事が少ないので印象に残らないだけなんです。
ですから、この機会に活躍してその名を広めてもらいたいものです。


日本妖怪も個人的には良かったと思います。
特に、すねこすりが出てきたのは嬉しかったです。全く活躍が無かったのは残念ですが、好きな妖怪が顔見世程度でも出てくるのは良いですね。次は、すねこすりメインの話で登場して欲しいです。
反物になり活躍の無かった日本妖怪もいい味出していたと思います。今期の反物は、柄にそれぞれの妖怪の特徴が出ていたので見ていて面白かったです。
まるで金太郎飴みたいなつるべ落としの反物や、提灯のシルエットが幾つもある化け提灯の反物など、見ていて飽きないものになっていました。チーは妖力も大したことなく、柄も在り来たりと言っていましたが、妖力は兎も角、柄はこれ以上ないくらいに個性的だったと思います。特に、小豆洗いの「小豆大好き」は忘れる事が出来ないほどインパクト絶大です。
変なフレーズをプリントしているTシャツがありますが、「小豆大好き」反物を着物に仕立てるとあんな感じに仕上がるのでしょうか?


後は、かわうそが格好良かったです。
大して数が無いのに、幾らでも発射できる髭の毛針が凄く好きです。
方陣に捕らわれた時は、地獄の力を出すのかと思いましたが、発動はしませんでしたね。矢張り、鬼太郎の肉体があってこその技なのでしょう。
決め技の体内電気と水鉄砲の連携は相性が良さそうでした。確か、乾燥している時よりも水に濡れた方が導電率が上がった筈ですので、通常の体内電気よりもダメージが大きそうです。
鬼太郎の力を借りてやっと敵と戦う気になる辺りがとても可愛らしかったです。
今期のかわうそは、明らかに子泣き爺や砂掛け婆より優遇されていますね。
一期からずっと長い間下積みをして、今になって報われたということでしょうか。