『ゲゲゲの鬼太郎』5−72   

ゲゲゲの鬼太郎』第七十二話「妖怪城始動!!朱の盤奮戦記」の感想です。
今回はタイトルの通り、朱の盤にスポットが当てられた回となりました。今まであまり話の中心に来ないキャラクタが活躍するのは大変好ましく思います。それが自分の好きなキャラクタ、朱の盤となるとなおさらです。
三期以降、ぬらりひょんの側近としてレギュラー登場している朱の盤ですが、どのシリーズでも役立たずなキャラクタとして描かれています。今期においても同様で、ぬらりひょん一の子分を自認している割には、今まで目だった戦績を挙げておらず、今日の話に至っては、鬼太郎達に捕まり、妖怪城の重要情報を漏らした挙句、居城の場所まで教えてしまうという体たらく。これは、解雇どころではすまない大失態でしょう。処刑されても文句言えないように思えます。
しかし、五期でかつてないほどに凶悪になったぬらりひょんですが、朱の盤に対する甘さはだけは過去のシリーズと変わっていませんでした。鬼太郎を連れてきた朱の盤を、偶然妖怪城が始動するきっかけを与えただけで許しています。あれほどの駄目妖怪を手元に置いておくあたり、ぬらりひょんと朱の盤は、他の手下とは違う、強い絆があるのでしょう。
三期以降、朱の盤にスポットが当たる回は、人情ものになる傾向があり、今期においても少し良い話になっていました。朱の盤の駄目な妖怪だけれども、どこか憎めない愛嬌がある所を魅せるとしたら、一度落として持ち上げるぬらりひょんの人情話にするのが一番分かりやすいですかね。


因みに、伝承にある朱の盤がどんな妖怪かというと、アニメの朱の盤と違い、結構恐ろしい妖怪です。
朱の盤は会津地方に伝承のある妖怪で、再度の怪のバリエーションのひとつとして語られています。再度の怪とは、小泉八雲の『むじな』のように、一度怪異に出会い、その奇禍から逃れてほっと一息ついた時に、再び怪異と出会う形式の話のことを指します。
小泉八雲の『むじな』は、のっぺらぼうに出会うだけで話が終わり、その後どうなるかは分かりませんが、朱の盤は怪異と出会ったその後の結末まで語られています。朱の盤に出会って百日後に死亡したなどという話があります。
『鬼太郎』に出てくる朱の盤は、顔が大きいだけで特に能力のある妖怪ではありませんが、本来の伝承にある朱の盤は、変身と相手を死に至らしめる能力を持った恐ろしい妖怪のようです。


朱の盤がメインの回でしたが、今回は初登場の家鳴り、かまいたち、夜道怪も良い活躍をしていました。
今期初登場の家鳴りは、結構可愛くて良かったです。
家鳴りは作中の通り家を揺すって振動を起こす悪戯好きの妖怪として伝わっています。小さい鬼が何匹かが群れている外見は、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』にある鳴屋を参考にしたのだと思われます。
本来は、家に軋む音を立てる程度の大した力を持たない妖怪ですが、妖怪城完成の最後のピースになるといった大抜擢には驚きました。グレムリンもそうでしたが、この辺りのあまり力がない妖怪も、その特徴を最大限に生かしてストーリに組み込むのは、五期を面白くする魅力のひとつでしょう。


かまいたちは今回は格好良かったです。かまいたちは、ぬらりひょん一家の助っ人として登場していましたが、もう既にぬらりひょん一家最大の発言力を持った幹部といった風情です。朱の盤が古参の腹心であるのに対して、実力で地位を築いたエースといった感じですね。朱の盤とかまいたちの対比は、実際の組織にもありそうなリアリティが出ていて面白いですね。
きっちり白黒が付いたとはいいがたいものでしたが、少なくとも鬼太郎との直接対決にに敗北はしていませんし、劣勢になった場面もありませんでした。ぬらりひょんが彼を一目置くような言動をしたり、家鳴りを狩るのにも大きな功績を出したりと、もうぬらりひょん一家になくてはならない存在になっているように見えます。
クールな実力派といった感じの台詞や仕草も格好良かったですね。乙女坂成分が入っていなかったからそう見えたのでしょうか?


そして、待望の夜道怪の再登場です。
妖怪城が復活して鬼太郎絶体絶命の大ピンチを、まさかの夜道怪が救出しました。
鬼太郎を苦しめた強敵ですが、それだけに仲間になったときの活躍に期待が出来ます。かつて敵として戦った相手が、再登場の際に主人公の仲間になるのは、少年漫画、特にジャンプでよく見られるパターンです。この「良く見られる」をワンパターンと言われるのか、王道的展開と言われるのかは、今後話が面白くなるかどうかに掛かっています。是非とも夜道怪は大活躍を果たして王道と呼ばれるような存在になって欲しいところです。
夜道怪は横丁に定住して、ぬりかべや一反木綿のようにレギュラーとして活躍する事は無いでしょうが、蒼坊主のように度々ゲストとして助っ人に来るのでしょう。
夜道怪は、五期ではとても好きな妖怪のうちの一人ですから、この再登場はとても喜ばしいものです。
次回から、妖怪四十七士なる各都道府県の代表妖怪画登場する企画がはじまるようですが、埼玉県代表はこの夜道怪で決まりでしょう。