『ゲゲゲの鬼太郎』5−74   

ゲゲゲの鬼太郎』第七十四話「一反もめん!鹿児島決戦」の感想です。
先週から始動した「妖怪四十七士」を探す話になるかと思いきや、一反もめんの里帰りの話でしかありませんでした。後四十二人もいるのに、毎週志士が判明する展開にしなくてもよいものかと疑問に感じます。


さて、今週はオーソドックスな妖怪退治の話になっていました。先週までの設定は引き継いでいるものの、『鬼太郎』の基本である一話完結のエピソードです。
続きもののストーリも良いですが、一話完結の話もまた別のよさがありますね。前後の話を見ていなくても、その一話だけ見ても楽しめるのが一話完結もののメリットでしょう。
今回登場した妖怪は「辻神」です。作中で目玉親父がその特徴を殆ど語っていました。
兵庫県の淡路島、鹿児島県屋久島宮ノ浦に伝わる妖怪で、丁字路の突き当たりに建つ家に入り込む妖怪とされています。そうした家には病人が絶えず、不幸が続くと信じられたので石敢當を配置して、魔除けとしてきたとか。
作中では、この伝承通りの妖怪として描かれています。それ以外に追加された特徴は、人の心の間隙に付け込んで、己の都合の良いように操ろうとするところでしょうか。
この手の約束を取り付けて、その行為に対する見返りを得られるといった話は、日本の妖怪にも居ますが、西洋の悪魔のイメージが強いですね。己の本当に望むものを伏せて、相手を良い様に使おうとするのは、悪魔との知恵比べを連想させます。
辻に出るといった特徴は、辻神にのみに関する特徴ではありません。辻、橋、峠といった他の地域との接点に妖怪はわきやすいとされています。そういった所は、異界との境界だと考えられてきたからです。
辻神は、そのマージナルにわく妖怪の代表例といえる存在ですね。


妖怪辻神のデザインは、「偽一反もめん」と言うのが一番分かりやすいでしょうか。基本的なシルエットは一反もめんそのものです。角の様なものと口があり、顔の表情が目がきつくつり上がっている点のみが違います。
これは、一反もめんと何らかの関係があるのでしょうか?
一反もめんは、鹿児島に伝わる妖怪で、夜間に歩いていると急に視界を遮る妖怪だとされています。同様の現象としては、福岡の塗壁や、新潟の衾、徳島の衝立狸などがあります。いずれも道に出る怪異ですので、出没地域は似ています。
では、行動はどうなのでしょうか?辻神が病気や不幸をもたらすのに対して、一反もめんはいいところ通行の邪魔をする程度ですから、辻神の方が非常に性質が悪いです。この両者の特徴は、似ているとは言い難いものを感じます。
では、何故同じようなデザインになったのでしょうか?
辻神には、水木先生以外のデザインというものが見かけたことはありません。これは水木先生のオリジナルと判断しても間違いないでしょう。水木先生は、一反もめんと辻神に共通する特徴が記された文献を持っていて、そこからこの二つの妖怪を似通ったデザインにしたのかもしれません。


あと、今回目立っていたのは石敢當ですね。
この石敢當は主に沖縄に多くある魔除けです。ルーツを辿ると中国に行き着くようで、大陸から沖縄を経由して、九州まで伝わったようです。
家の表札と同じような形をしたものが主流ですが、シーサーの形をしたものや、碑の形をしたものなどバリエーションも様々です。
また、現在でも市販されており、材質も古来よりある石材からプラスチック製のものまで、形も素材も種類が豊富です。
沖縄県では、丁字路や三叉路に良くあるそうで、県内に一万以上の石敢當があるそうです。
石敢當」で画像検索すると、色々な形のものが見る事が出来ますので、一度試してみてはいかがでしょうか。