『ゲゲゲの鬼太郎』5−83   

ゲゲゲの鬼太郎』第八十四話「燃えろ!小豆連合」の感想です。
今回登場の妖怪は、妖怪横丁の住人で準レギュラーの小豆洗いと、五期初登場の小豆婆、小豆はかりの小豆連合です。
小豆連合軍は、水木先生の原作漫画『新編 ゲゲゲの鬼太郎』に登場しています。また、この「小豆連合軍」は、アニメ三・四期でも取り上げられています。
原作では、人間の土地開発により小豆を栽培出来なくなった為、人間への復讐の気持ちも込めて、人間の顔を小豆畑にする小豆連合軍と鬼太郎との対決が描かれています。
今回の話では、原作と違い、小豆洗いが小豆連合の一員として悪事を行うのではなく、小豆連合の悪事をたしなめる側になっているのが大きな相違点ですね。


原作ではこの三人は、小豆一族と呼ばれていて、親戚筋のようにいわれていますが、伝承を見ると親戚筋どころか、殆ど同じ妖怪だったりします。

小豆洗いと小豆婆は、どちらも水辺でしょきしょきと小豆を洗うような音を立てるとされて、姿は目撃されない妖怪です。地域によっては、狐狸や蛙が正体といわれていたりします。
全国各地に同じ現象を起こす妖怪おり、地域ごとにあずい洗い、小豆洗い狐、小豆あらいど、小豆洗い婆、小豆こし、小豆ごしゃごしゃ、小豆さらさら、小豆摺り、小豆そぎ、小豆そぎ婆、小豆磨ぎ、小豆磨ぎ婆さん、小豆とげ、小豆あげ、小豆ヤロなどといった名前になっています。
小豆婆は恐らく水木先生のオリジナルデザインなのかと思われますが、小豆洗いの方は竹原春泉の『桃山人夜話』に収録されている同名の妖怪の絵を引いて来ています。

小豆はかりは、小豆洗いと違って、屋内に出現する妖怪です。
夜間に屋根裏でまるで小豆がこぼれるような音がした時、それは小豆はかりが屋根裏にいるとされています。
小豆洗い、小豆婆と同じく音のみの妖怪で、姿は確認出ません。

現在では夜中に怪音があったとしても、きっと小豆を磨ぐ音と連想しないでしょう。この辺りが時代を感じさせます。
きっと、江戸時代辺りにおいては、小豆はとても重要な穀物として、全国各地で栽培されていたのでしょう。


本編はギャグ回として考えても良いですよね?
原作同様、悪玉小豆を食べた人間の顔を畑にして小豆を収穫したり、煮汁をぶっ掛けて鬼太郎から小豆を収穫しています。そこに原作に無い「ジャックと豆の小豆」という新アイテム(?)を登場させて鬼太郎を拘束しています。
この「ジャックと豆の小豆」というネーミングセンスに笑ってしまいました。「ジャックと豆の木」のパロディなのは分かるのですが、生粋の日本妖怪が「ジャック」なんて言うと凄い違和感を感じてしまいます。また、「豆」と「小豆」が被っているのはワザとなんですよね?
そして、禁断の邪悪な小豆「戦豆」なるこれまた超設定の謎アイテム(?)も登場しています。ここは突っ込むところですよね?使用者の意思に反して暴走してしまうといった他で幾度と無く見た展開や、あからさま過ぎる馬鹿設定がB級作品好きとしては堪らなくいとおしく感じてしまいます。


今まで戦闘能力を隠していた小豆洗いのアクションシーンも素晴らしかったと思います。
小豆洗いは、アニメ三期で鬼太郎と互角以上の格闘を魅せてシリーズ最強の武闘派として活躍していましたが、今回の小豆洗いもそれに勝るとも劣らないようなつわものになっていました。
小豆婆と共に、小豆を吐き出す小豆鉄砲などの新能力を習得し、且つ紅蓮の炎をまとった拳で敵を撃つ徒手空拳の近接格闘もこなす遠近両方の戦闘が可能なオールラウンダーでした。
見た目が貧相で、とても戦闘に役に立つようには見えないキャラクタなのにこの強さ。今までその力を出し惜しみしたんですね。
また、小豆洗いは戦闘のみでなく、鬼太郎たち横丁住人と小豆連合の仲間との間で揺れるのも良かったです。最初に悪事を働くのが同類の小豆連合であると見抜くと、真っ先に諌めに行った時、小豆連合の仲の良さを見せ付けていながらも、悪事を働くことは許されないといったスタンスをはっきりと見せていました。その後、後味の良くない別れをした後なのに、小豆畑が復活すると聞くと、笑顔で小豆連合に駆け寄る小豆洗いは、本当に連合の二人の事が好きなのだと全身で現していました。
そして、鬼太郎が畑の肥やしになるのを見た小豆洗いの表情も、絶望感がよく現されていました。この表情が、その後の連合の二人が大事だからこそ、間違った行いは力をもってしてでも止めるシーンと上手く絡まっていたように感じます。
残念な点は今回の小豆洗いは、一寸アカマタと被っているようにも感じたところでしょうか。


そして、小豆洗いの仲間、小豆婆と小豆はかりも良いキャラクタしていました。
小豆連合の三人で小豆の絨毯の上で寝転がるのはとても笑ってしまいました。
また、小豆が一番大事、小豆のためなら他のことなど知ったことかといった態度も良いですね。小豆が大事なものの、かといってそれは他の何かを犠牲にしてはいけないという立場の小豆洗いとの対比が上手くいたように感じます。原作や過去のアニメにおいては、小豆洗いと小豆はかりが同じ立場にいたため、個々のキャラクタの書き分けが今ひとつでした。今ひとつというより、分ける必要が無いため同じものにしていたのかも知れません。ところが、今回は、小豆洗いを連合より鬼太郎寄りにしているため、小豆洗いのキャラクタが濃くなっています。
この展開は、四十七士入りする小豆洗いを立てるのに、一番貢献しているように感じました。


最期に四十七士と覚醒しつつも、紋章が後頭部にデカデカと輝く落ちまで付いて、今回は本当に小豆洗いの為だけにあったような回でした。
今日は、とぼけた感じのするキャラの意外な一面が見れたし、全編通じて笑いどころ満載でとても楽しめました。
ところで、ねずみ男の末路はどうなっているのでしょうか?