『ゲゲゲの鬼太郎』5−86   

ゲゲゲの鬼太郎』第八十六話「背後に迫る恐怖!後神」の感想です。
今週は、大勢の妖怪が登場した先週と打って変わって、話を後神ひとりに絞り込んでいました。
今回の放送を見て、矢張り一度に登場させる妖怪はひとりだけの方が良いと改めて感じました。話を実質二十分程度の限られた時間内に収めるのですから、沢山のキャラクタを描き切るのは至難の業です。実際、先週の放送では沢山の妖怪が出たものの、ただ「出ただけ」でしかない扱いを受けてしまったキャラクタもいました。多くの妖怪が見れるのは嬉しいのですが、各々の個性潰してしまう様なぞんざいな扱いをして欲しくはありません。
そう考えると、一話に登場する妖怪は一体が限界なのかなと思います。


さて、今回の妖怪は後神です。
原作及び、アニメ1・3・4期に妖怪サボテンと共に登場している古株です。
ストーリの方も過去作品に習って作られているので、大枠は同じです。
過去の作品では、夜店で後神が人間の家を乗っ取ろうとして、妖怪サボテンを売りつけていたのですが、今回はサボテンを売ったのがねずみ男で、後神と妖怪サボテンは偶然出会ったという点が違っています。
過去作品の後神は計画的犯行でしたが、今回の後神は魔が指してやってしまったといった感じでしょうか。そのためか、今回の後神はあまり凶悪な感じがしませんでした。
凶悪と感じないどころか、寧ろ可愛らしくすら感じます。そう感じたのは、後神の目線から話が展開する倒叙形式的な構成になっていたからかもしれません。
犯行動機も理解出来なくも無いですしね。持ち家欲しさにの行為といった点は、現代の住宅事情を映しているのかもしれません。人間と同様に、妖怪も住居が無いのは辛いのでしょう。
確かにやってはいけないことですが、事件が解決して、風呂屋で住み込みのバイトをしていたラストを見ると、何故か許せてしまいます。
大元の出典は、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に描かれている同名の妖怪です。
そこには「うしろ神は臆病神につきたる神也。前にあるかとすれば、忽然として後にありて、人のうしろがみをひくといへり」と説明が書かれています。
この説明を見て分かるように、後神という名称は、「後ろ髪を引く」という言葉から来ています。
この妖怪は、鳥山石燕が人の恐怖心、特に臆病者を揶揄して創作したのではないかと謂われています。
そのため、特にどこかで出没した妖怪というわけではないようです。
尚、石燕の後神は一つ目の妖怪として描かれています。水木先生の妖怪画集『妖鬼化』に収録されている後神も石燕のものを参考にしている為、一つ目となっています。
では何故アニメでは二つ目なのかというと、原作漫画では目が二つになっているからです。きっと、原作漫画を描くときに、水木先生が間違えて二つ目にしてしまったのでしょう。


今回の後神は、過去の作品と違い、家人の了承無しでは家に入る事が出来ないようです。家人に招き入れられないと家に入れないという点は、吸血鬼を連想してしまいます。
また、この了承を得る点で、人を騙すようにして強引に曲解しながら了承を得たところは、五期第六十一話のくびれ鬼を連想しました。後半でねずみ男がテレビを見ていた場面で、画面の中に移っていたのは六十一話に登場したアイドルのAYAだったように思います。もしかすると、六十一話と同じ人が作っていたのかもしれません。
今回本編には出ていませんでしたが、過去に頑張っていたキャラクタのその後が少しでも垣間見れるのは中々面白いものでした。AYAがアイドルとして成功しているようだったので、アマビエも安心している事でしょう。
全体的に、ホラーテイストが溢れる話になっていて、とても良い雰囲気だったと思います。原作の基本路線をしっかり踏襲しつつ、且つ古臭い感じが一切しない話になっていて、上手い具合に原作をアレンジしていると思いました。


さて、今回は本編も良かったですが、劇場版、テレビ次回放送共に予告がとても気になりました。
劇場版は、登場妖怪の名前が出ていましたね。ヤトノカミと書かれていましたが、『常陸国風土記』の夜刀神の事でしょうか?夜刀神は直接戦闘型の妖怪ではなく、呪詛を使って人を殺すタイプの妖怪だった筈なので、同名の違う妖怪なのかもしれません。それに、直立二足歩行の妖怪だったので、外見も違いますしね。ただ、手が蛇になっていたのが気になるところです。
個人的には、もし夜刀神の話をするならば、『ドラゴンボール』の様な派手な戦闘アクション物ではなく、『金田一耕助』シリーズの様な、田舎を舞台にしたおどろおどろしいものにして欲しいです。
劇場版は、前々から「妖怪を超えた敵」と謳っていたので、てっきり劇場版の敵はヒ一族になるものとばかり思っていました。


テレビ版本編は、次回遂に待望のゴーレムの登場のようです。
オープニングに姿を見せたときから、ずっと気になっていました。
長らく放置されていたヨナルデパズトーリの姿も見えました。四ヶ月ほど間が開いていしまいましたので「忘れちゃいーないかい」と言われてしまいそうです。
どうやら、ぬりかべとゴーレムの友情の物語になりそうな予感です。作られた存在の悲哀が描かれるのでしょうね。
鬼太郎が「奴の弱点は」と言っていましたが、ゴーレムの弱点は"e"なのではないでしょうか?