『ゲゲゲの鬼太郎』5−87   

ゲゲゲの鬼太郎』第八十七話「巨人!ゴーレムの涙」の感想です。

今回登場の妖怪は、タイトルの通りゴーレム、そして西洋妖怪の切り札になった魔火です。
ゴーレムの方は原作には登場していないと思いますが、アニメでは四期に西洋妖怪として登場してます。
その時は、西洋妖怪四天王の一角、魔女グルマルキンに操られて、鬼太郎と対戦しています。
ゴーレムはファンタジーを題材とした小説、ゲーム、漫画等でよく見かけます。出世作は『ドラゴンクエスト』あたりになるのでしょうか。
作中で目玉親父が解説していたように、ユダヤ教の魔術師によって作られた魔法仕掛けの泥人形で、謂わば魔法で動くロボットの様な存在です。
ゴーレムを製作するには、呪文を唱え、「אמת」(emeth、真理)という文字を書いた羊皮紙を人形の額に貼り付けることで完成するとされています。
そして、ゴーレムを壊す時には、作中の様に「אמת」(emeth)の「א」( e )の一文字を消し、「מת」(meth、死)にすれば自壊するといわれています。
ゴーレムは大抵本作に出たように、泥或いは土や煉瓦、金属といったもので出来た巨人として登場しますが、この世界で一番最初に作られたゴーレムは実は人間だといった説もあります。
旧約聖書』にある天地創造において、ヤーウェがアダムを作るために息を吹き込んだ形の無い粘土に与えられた名前がゴーレムだといわれています。
また、『鬼太郎』にも登場するフランケンシュタイン*1もゴーレムです。メアリー・シェリーの原作を読んでいないので、正確なところは分かりませんが、小説のフランケンシュタインは、死体を素材として作られたゴーレムという設定だそうです。


一方、魔火は正確なところはどんな妖怪なのか分かりません。
原作漫画も、過去のアニメにも登場しいていない新規参入組みになります。
作中ではフランスの炎の妖怪で、他者に乗り移るとされています。
水木先生の『妖鬼化』では、日本でいう鬼火にあたり、悪魔の操る火の玉だとされています。
悪戯好きで、人を道に迷わせたりし、時には群れをなして町に現れたりもするそうです。
その正体は天国にも地獄にも行けない死霊だとされ、それは罪人であったり、赤ん坊であったりするそうです。
水木先生の妖怪解説は、時に間違いがあるので本当にこういった伝承があるのかは分かりませんが、怪火の類は世界各地にありますので、実際に魔火といった妖怪がいてもおかしくはありません。


さて、今回のお話は、傷ついたゴーレムとそれを直したぬりかべの友情物語となっています。
全体的に纏まった話になっていて、良い雰囲気でした。
思ったことを適当に書き散らしていきます。


ゴーレム、ぬりかべ共に、大きな体で力持ち、反面優しい心を持った似たもの同士の妖怪という事もあり、良い組み合わせでした。
それにしても、今回登場のゴーレムは大きすぎではないでしょうか?ぬりかべすら小さく見えてしまいます。
ぬりかべと力比べするのですから、ぬりかべと同じ大きさにした方が良かったのでは?
また、大抵の作品では、ゴーレムは製作者に操られるロボットでしかなく、自我を持っていません。しかし、このゴーレムは自我を持って活動していたのでとても新鮮に見えました。
自立型でありながら、他者からコントロールされるといった設定も盛り込んであるあたりが、とても上手くゴーレムという妖怪を扱っていると感じました。


ぬりかべ宅に菓子を持って訪問する鬼太郎。ぬりかべが不在だと分かると、菓子を置いて帰ろうとします。
置いて帰るのはいいのですが、何故か家の前の路上に置いていきます。
いや、我が目を疑いましたよ。それを黙って見ていた目玉親父に対して、「お父さん、あなた息子にどんな教育をしたのですか?」と問い詰めたくなります。
普通は家の中、鍵がかかって入れなかったとしたら、せめて軒先に置くべきでしょう。


初代の活躍に触発されたためか、ドラキュラ三世が先代と特訓していました。これが今後の伏線になるのでしょうか?
アニメ五期のシリーズ構成を勤める三条陸さんは、かつて『週刊少年ジャンプ』誌上に『ドラゴンクエスト ダイ大冒険』を連載していました。そこでは、部下にすら舐められる三流魔王のハドラーを最強のライバルとして再生した実績がありますので、ドラキュラ三世も初代の名前に恥じない強敵となり、ヘタレの汚名を返上してくれるかもしれません。
登場以来いいところ一切見せていない西洋妖怪ニュージェネレーションチームですが、格好良い活躍を披露してくれることを期待します。


魔女ザンビアが水着姿を御披露していました。個人的には、背中がセクシーな感じでよかったと思います。
これで、レギュラーを勤める女性は全て水着になったのではないでしょうか?
五期の女性陣はねこ娘をはじめ、サービス精神が旺盛なようです。
ザンビアは西洋妖怪側唯一の女性キャラ(先代の魔女を除く)ですので、ザンビアもねこ娘同様に、毎回違う衣装で出てきた方が良いと思います。


西洋妖怪の切り札魔火。
コントローラーといっていたから、魔法仕掛けの機械なのかと思っていました。ザンビアも以前似たようなものを使っていましたから。
妖怪をコントローラーと表現するあたり、水木らしいなと感じました。


クライマックスはゴーレム対ぬりかべの巨漢対決。
ぬりかべが格闘するのは珍しいし、パンチを放つのも滅多に見られません。
ぬりかべがゴーレムの「א」( e )を削るのではなく、打ち抜くのはとても豪快で、何もそこまでしなくてもいいじゃないかと思ってしまいました。
これを見てぬりかべの四十七士の覚醒させたのは早すぎではないかと感じました。これだけの名場面があるのですから、こなき爺たちと同時覚醒にしたのは失敗だったと思います。
友を思う気持ちにより、四十七士として覚醒する展開にした方がより燃えた筈です。


魔火を葬った鬼太郎の新技は、指鉄砲に髪の毛の鎗を乗せて射出するものでした。
既存の技を組み合わせて、新しい効果を出すのは珍しい展開です。中々面白いと思いました。



五期に限らず、ぬりかべメインの話はとても少ないだけに、ぬりかべメインの回があると彼も報われたなと感じてしまいます。ただでさえ出番そのものが少ないですからね。
今回の話は、三期の第百三話「純愛ヌリカベとおしろい娘」と並ぶぬりかべの代表作となるでしょう。

*1:正確には、フランケンシュタイン博士が作った怪物で、名前はありませんが、便宜上フランケンシュタインとします。